一枚のチョコレート

一枚のチョコレート

お母さん。

 田舎育ちだったお母さんの家はとても貧乏だったんだって。
お母さんが小学二年生の時、仲良しのよしこちゃんのお誕生日会に誘われて峠の山を越えてよしこちゃんの家まで歩いて行った。 

 お母さんは毎日小学校まで峠の山を越えて通っていたんだって。

お母さんは絵が得意だったから、よしこちゃんの顔を描いた絵をプレゼントしたと言っていた。

帰り、よしこちゃんのおばさんからお返しに板チョコを一枚もらったんだって。

 お母さんはとても嬉しかったから大事に家まで持って帰ろうと思っていたら、帰る途中で板チョコを無くしてしまった。

 お母さんは、また、よしこちゃんの家までの道を引き返して板チョコを探したけどどこにも落ちていなくて誰かに拾われたかなと思うと、とても悲しかったと言っていた。

 お母さんが家に帰った時には日が暮れかけて薄暗くなってきていて、田舎の山道は真っ暗で怖かったんだって。

甘いチョコレートは滅多に食べられなかった時代だったと言っていた。

小学二年生の、かわいそうなお母さん。


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